第1章:三人の紹介編
今日も俺たち三人は、裏庭で焚火を囲んでいる。日がとっぷりと暮れ、あたりは暗闇に包まれ、火の粉だけがパチパチと音を立てて空に舞っていく。焚火の周りには、使い古された切り株が二つと、足が一本足りない木の椅子が一つ。
俺、ピートは切り株に座り、ペーターは当然のようにその三本足の椅子に腰かけている。そして、向かい側のもう一つの切り株には、にやけ面のポパイが座っていた。
焚火の上で串に刺したマシュマロが少しずつ膨らんでいく。ペーターはそれを均等に焼こうと、身を乗り出した。その瞬間、グラリと椅子が揺れ、彼はゆっくりと、まるでスローモーションのように後ろに倒れた。
無表情のまま、俺は燃えるマシュマロを串から外し、口に放り込む。ポパイはいつものようにニコニコしているだけで、何も言わない。
ペーターは何も言わずに起き上がり、また何事もなかったかのように椅子に座り直す。そして、また同じようにマシュマロを焼こうとして、また倒れた。
俺たち三人は、この町のカースト最下層だ。もう28歳になるのに、誰一人としてまともな仕事に就いていない。その日の稼ぎで飯を食い、ただブラブラと日々を過ごしている。
町の連中は俺たちのイニシャル、ピート(Pete)、ペーター(Peter)、ポパイ(Popeye)の頭文字を取って、俺たちを「ピーナッツ」と呼んでいた。それが嫌でしょうがなかったが、いつの間にか面倒くさくなり、自分たちでもそう呼ぶようになっていた。
俺は焚火を見つめながら言った。
「俺は、この町が好きなんだ。」
ペーターは三本足の椅子の上で、まるで俺の言葉を聞いていないかのように、ただ静かにマシュマロを焼いている。
「いつまでもこうしているわけにはいかないだろ。なぁ二人とも、俺たち、この町を守る警察官にならないか?」
ペーターがまた、椅子から転んだ。ポパイは相変わらずニコニコしながら言った。
「ヘイ、ブラザー、最高だね!」
ペーターは何も言わない。俺は頷いた。
俺がこの町を愛しているのは本当だ。俺はここで生まれたし、ここで育った。
ただ、俺は昔から、背が低かった。体力には自信があったし、アメフトも好きだった。高校時代はアメフト部に入ったけど、背が低いってだけでレギュラーから外されて、ずっと雑用ばかりやらされていた。毎日、ユニフォームを洗濯するだけの人生だ。意中の幼馴染の女の子に告白しては振られ、それから計15回振られて、ついにその子がアメフト部一のエースと付き合い始めた。エースは金髪パーマでマッチョ、ピンクの袖なしTシャツで水色のヘアバンドを常にしていた。
その時、俺は本当に落ち込んだけど、このペーターとポパイの二人はただ黙って、俺のそばにいてくれた。何も言わなかったけど、それが一番の励みになった。もちろん、今聞いても、二人はそんなこと覚えていないだろう。それからだ。俺は出会う女の子ほぼ全員に告白するようになった。成功率はゼロ。累計60回は振られたと思う。
ペーターは、俺の人生で会った中で一番不思議なやつだ。親の躾とやらで、子供の頃に左耳を焼かれて、それを隠すために髪を伸ばし始めた。いつも長髪で、少しだけイケメンだ。クールな雰囲気を出しているが、あれは単に何も考えていないだけだと俺は知っている。
昔、コンビニの店員としてバイトを始めたことがあった。でもバイト初日の初出勤から、たった5分で強盗に入られたんだ。ペーターは何も動じずに、言われた通りレジのお金を全部渡した。強盗は何もせずに去っていったが、彼はその場でクビになった。理由はもちろん何もしないからだ。
ポパイは、俺たちの中で一番小柄で、ガリガリに痩せている。黒縁眼鏡をかけていて、いつもニコニコしている。口を開けば「ヘイブラザー!」と陽気な声が聞こえてくる。彼は、一番の虚弱体質だ。だけど、常にポジティブで、誰にでも優しい。学生時代、彼はひどいいじめに遭っていた。毎日誰かに殴られ、お金をせびられ、いつも荷物持ちを笑顔でされていた。俺とペーターは、そのいじめっ子たちに関わりたくなかったから、助けなかった。俺は今でもそのことを後悔している。
でも、ポパイはもう忘れている。いや、忘れているふりをしているだけかもしれない。それでも、彼は今の人生を楽しんでいるようだ。少し不細工な彼女が居るが、彼女の素晴らしい所をいつも嬉しそうに話している。
「…で、どうだ?」
俺の問いかけに、ポパイはいつものように朗らかに笑った。
「最高だね、ブラザー。警察官か。最高にクールじゃないか。」 ペーターは、また椅子から転んでいた。