第2章:警察学校編

まさか、俺たちが警察官になれるなんて。

数週間後、俺たち三人は警察学校の面接会場にいた。もちろん、ろくに準備もしていない。ペーターはヨレヨレでブカブカの黄色のスーツを着ていた。服の山の一番下から3年ぶりに今朝、引っ張り出したそうだ。

ポパイはピッタリと髪型を七三分けにして、蝶ネクタイと短パンにサスペンダーという、まるで学芸会の様な格好だ。

俺は気合を前面に出すために、タキシードを着てきたが、間違っていつものスニーカーを履いてきてしまった。

俺たち三人はどうやら他の生徒志願者とは違って、面接会場が三人だけ個室だった。さすが教官たちは見る目がある。

面接室に通されると、そこには誰もいなかった。3つの椅子に俺たちは座ると、15分くらい待たされた。ペーターは前を見て黙って座っていた。ポパイはニコニコしてキョロキョロしている。俺はただただ緊張していたが、開始5分で居眠りをし始めてしまった。

ペーターに肘で起こされると、なぜか校長が目の前に座っていた。俺が目覚めるのを確認すると、立ち上がり大げさに両手を広げて俺を抱きしめた。

「君たちだな!あの時の!まさか警察官を志願してくれるとは嬉しいぞ!」

校長は俺たちが3年前に、偶然捕まえた強盗事件のことを話した。確か裏庭で焚火をしていたら、金品を抱えた二人の男が走ってきて、俺たち三人が焚火をしていたことを怒られると思って、立ち上がり、逃げ出そうとした。すると、その男たちにぶつかってしまい、その二人の男たちは焚火に転がり込み、悶えている所を追ってきた警察が捕まえた、というくだらない事件だった。

感謝状を貰ったが、奇しくもその時の格好と同じ格好を俺たちはしていた。

俺たちはただぶつかっただけなのに、校長はそれを素晴らしいチームワーク、と褒め称え、その場で組織推薦での入学を許可してくれた。

こうして、俺たちピーナッツの警察官になるための日々が始まった。

警察学校での生活は想像以上にハードだった。毎朝4時半に起床し、ランニング、訓練、座学。すべてが俺たちの人生とはかけ離れていた。

そして、その訓練生の中には、驚くほど美しい女性がいた。彼女の名はルーシー。長いブロンドの髪をポニーテールにして、青い瞳がキラキラ輝いている。俺は一目見て、スローモーションになり、彼女の背景がバラの花で埋め尽くされ、一瞬で恋に落ちた。

「あの、君、僕と付き合ってくれないか?」

訓練中だったので、泥だらけのタンクトップ姿の俺が彼女に告白するまで、わずか5秒しかかからなかった。

「え、誰?無理でしょ。」

即答だった。

ルーシーはそのまま去っていったが、俺の心は折れなかった。むしろ、警察学校で彼女を振り向かせるという新たな目標ができた。

座学が始まった。俺とポパイはまったく頭に入らない。歴史、法律、心理学、どれもこれも退屈で、眠気が襲ってくる。ポパイはいつも笑顔で寝ていて、俺も太ももにペンを何度も突き刺したのだが、居眠りばかりだ。

だが、ペーターは違った。彼はいつも無表情で、無口なまま、すべての授業を完璧にこなしていく。テストの結果を見ると、俺とポパイが常に下から二番目と三番目を争っているのに対し、ペーターはいつもトップの成績だった。信じられない。

「なぁ、ポパイ。テストの答えを盗みに行かないか?」

俺は小声でポパイにささやいた。彼はいつものように、満面の笑みを浮かべて言った。

「ヘイブラザー、最高だね!」

真夜中、俺とポパイはパジャマのまま、忍び足で教官室へと向かった。机の引き出しをこじ開け、分厚い教科書の下に隠されていた、次の試験の答案用紙を見つけた。

「やったな、ポパイ!」

俺が小声で叫んだその時、背後から物音がした。振り返ると、そこには教官が立っていた。

「おい、お前たち、何をしている!」

俺たちは答案用紙を抱えて、無我夢中で逃げ出した。夜の学校を走り回り、行き止まりにぶつかったその時、前から走ってくる二つの影があった。俺たちはその影と勢いよくぶつかり、四人とも地面に倒れ込んだ。

「痛ってて…」

俺たちが立ち上がると、倒れた二人がもがいている。見ると、片方の男が抱えていたカバンから、大量の金品がこぼれ落ちていた。そして、周りには答案用紙が散らばってしまっていた。

「てめぇら、余計なことを…あっ、お前ら!」

その男たちの顔を見て、俺は驚愕した。それは、あの時俺たちが偶然捕まえた、本物の強盗犯だった。教官が追いかけてきて、二人の強盗を取り押さえた。

翌日、俺たちは校長室に呼び出され、またしてもべた褒めされた。

「警察官の卵として素晴らしい功績だ!」と校長は言い、俺たちを表彰してくれた。その場にはルーシーもいて、彼女は俺に近づいてきて、俺の頬にキスをしてくれた。

「かっこいい!ピート!」

俺は天にも昇る気分だった。一方、教官は首をひねっていた。なぜ泥棒が金品と一緒に答案用紙を盗んだのか、どうしても理解できないようだった。俺たちは聞かれても自分たちが困るので黙っていた。

その後の射撃訓練でも、ペーターの才能は際立っていたが、ポパイには敵わなかった。ポパイは笑顔で次から次へと的に正確に命中させていく。俺は銃を構えることすらままならず、弾は明後日の方向へ飛んでいき、空を飛んでいる鳥が落ちてきて教官に激突した。

体力テストでも、俺は俊足を生かし、なかなかの成績を出したが、ポパイはすぐに息切れして動けなくなる。ペーターは無表情で、すべての種目でトップの成績だった。

警察犬の訓練では、俺は苦手な犬にグラウンドを隅から隅まで追いかけられた。ポパイは異常なほど犬に好かれ、連携はバッチリだった。ペーターは常に左手を犬にかじられていたが、気にしてなかったみたいなので放っておいた。

唯一、ペーターが苦手なものがあった。自動車の運転だ。俺とポパイは割と上手に運転できたが、ペーターはすべてワンテンポ遅れる。加速、ブレーキ、ハンドル、すべてが遅れて、結局、教習車を何度もぶつけていた。

4か月の警察学校生活は、あっという間に過ぎた。卒業試験の日、俺たちは全員ギリギリで合格した。俺がルーシーに最後に告白をすると、彼女は優しく微笑んで言った。

「ピート、警察官同士は無理よ。またいつか、どこかで会いましょう。」

そうして、俺はまた振られた。この頬を伝う涙は警察官になれたからなのか、振られたからなのか。だが今日から俺は、胸を張って警察官だって言えるんだ。

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