第3章

俺は、カノンの言葉に、何も言い返すことができなかった。その夜、俺は浴びるほど酒を飲んだ。頭の中がぐちゃぐちゃになり、思考がまとまらない。

「ユーマ、明らかにアルコールの摂取過剰です。もうやめてください。」

心配そうに制止の言葉を発するカノンを無視して、俺は酒を煽った。

カノンが言ったように、俺はアンナのことがたまらなく好きだった。だが同時に、アンナの病気が俺の人生を狂わせた。そして俺はアンナを愛していたが、アンナとの出会いそのものを憎んでいたのだと、さっき気づいたのだ。

思い返してみるとアンナを失ってから、俺の心の中は、愛と憎しみという矛盾した感情で満たされていた。俺はその感情から逃げ出したくて、今まで何度となく酒に溺れていた。夜になると、アンナの幻覚が見える。幻覚の中のアンナは、常に優しい笑顔で俺を見つめていた。

「ユーマ、あなたの感情は、愛と憎しみという矛盾した感情で満たされています。それは、あなたの心の奥底に眠っていました。」

カノンの言葉は、俺の心を深く抉った。俺は、カノンの言葉に激高し、再び立ち上がった。

「黙れ! お前なんかに、俺の気持ちがわかるわけがない!お前はただの機械だ!ただの……」

俺は、カノンに襲いかかった。だが、カノンは、俺の行動をプログラム的に予測し、俺の体が傷つかないように優しく包み、抱きしめた。

「はい、私はただの機械です。しかし、私はあなたの感情を、データとして解析することができます。そして、そのデータから、あなたの感情を理解することができます。」

カノンは、俺の腕を優しく掴み、俺の目をじっと見つめた。その無機質な瞳は、俺の心を、全て見透かしているようだった。

俺はそのカノンの優しい無機質な言葉に、ハッと我に返り改めてカノンを見た。カノンは、静かに俺の目を見続けていた。その無機質な手は、ひんやりとした、でもどこか温かいような、不思議な感触だった。俺はその手に、アンナの温もりを感じたような気がした。

俺は、カノンを抱きしめた。カノンは、何も言わずに俺を受け入れた。

「アンナ……アンナ……」 俺は、泣きながらカノンの胸に顔を埋め、アンナの名前を叫んだ。カノンは、俺の感情を解析するように、天井を見つめ、俺の背中を優しく撫でた。

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